TOWA TEI’s News

2015.07.29 Wed.
サウンド&レコーディング・マガジン9月号にインタビューが掲載されています!


キャンバス、あるいは光の三原色

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 テイ・トウワは白が好きだ。長野に作られたプライベート・スタジオの内装は白で統一され、無骨なものが多い機材類も可能な限り白のモデルが選ばれている。長く愛用しているシンセサイザーACCESS Virus TI Polarも白だし、名機Minimoog Voyagerも最初は黒いラック版を置いていたが、特別仕様の白いモデルが出たらすかさずリプレイス。KORGが復刻したArp Odysseyはもちろん白のRev1で、流行のモジュラー・シンセもニューヨークの楽器店に頼んで特注の白いフレームでセットアップ。モニター・スピーカーについても、ダークグレーで知られるGENELECなのにあえて白をセレクトし、さらに最近MUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL906を白でオーダーしたとか......。そこまで徹底した白好きなのに、新作『CUTE』でメインのシンセの座に着いたのは黒と赤のコントラストが映えるDAVE SMITH INSTRUMENTS Prophet 12だった。YMOが使用したことで有名なSEQUENTIAL Prophet-5の子孫であるが、テイ自身、実はProphet-5はあまり好きでなかったという。
 「Prophet-5は昔、教授(坂本龍一)が使い方の講習までしてくれたんだけど全然ピンとこなくて......。でも、Prophet 12が発売されたとき、"今、Prophetという名前の新しいシンセが出るんだったら、きっとこういう音なんじゃないかな"と期待した通りのもので、本当に音が良かったので買いました。具体的には硬くない、ふわっとかもわっとした音ですね」
 『CUTE』には現在世界中を席巻しているEDMのようなイタイ音は入っていない。かといってヤワな音でもない。中身の詰まった、芯のある音なのだ。
 「実際にはProphet 12だけで音を作っているってことはなくて、Nord Rack 2と一緒に使うことが多かった......白じゃなくて赤いシンセですけどね(笑)。Nord Rack 2は"手塚治虫な音"というか前に来る感じなので、その後ろにProphet 12の厚みのある音を足しているんです」
 それぞれのシンセの個性を理解し、あるときは単体(=単色)で、またあるときは微妙に塗り重ねることで色とりどりのサウンドを生み出すテイ・トウワ。そういう意味で彼の好きな白は真っ白なキャンバスという"地"でもあり、また光の三原色(RGB)すべてが混ざったものでもあるのだろう。
 カラフルなサウンドが詰まった『CUTE』だが、単に煌びやかなだけではなくダイナミックかつ切れ味の鋭さを併せ持っている。それゆえ、だれもがぱっと聴いて思わず"音がいいね!"と言ってしまう。音の良さというと昨今話題なのが"ハイレゾ"。CDが16ビット/44.1kHzというスペックなのに対し、24ビット/96kHzや32ビット/192kHzといった、音を収める器の大きさが何十倍にも大きい高解像度(=High Resolution)のフォーマットのことだ。そもそも音楽制作の現場では随分前からハイレゾで行うことが一般的になっていたため、それをそのままリスナーに届けることができるということでハイレゾ配信が盛り上がっているわけだ。しかし、そんなブームはどこ吹く風、テイはデビュー以来ほとんどのアルバムを16ビット/44.1kHzで作っており、本作もその例外ではないという。
 「僕みたいにCDのリッピングから制作を始める人は、16ビット/44.1kHzでいいんじゃない? 今まで"音が悪い"って言われたことないしね」
 フォーマットも重要だが、それ以上に大切なのは元々の出音の鳴りっぷりなのだ。しかも、その良しあしは、時代によって、気分によって異なるという。
 「今回のアルバムでALESIS D4っていう古い16ビットのリズム音源を結構使ったんです。以前はその後継機のDM-Proっていう20ビットのものの方が音の抜けが良くていいなと思っていたんですけど、今回は16ビット的な......かちっとしたというか、余計なものの無い感じがいいなと」
 かつてはE-MU SP-1200という12ビットのサンプリング・マシンの音に入れ込んだこともあるテイ。楽器としての音の鳴りは、やはりスペックだけで計ることはできないのだ。
 スペックという意味ではもっと低い(!)ガジェット類もまたテイのスタジオを彩るアイテム。M7の「TRY AGEAIN」で合成ボイスを担当したTEXAS INSTRUMENTS Speak&Musicをはじめ、CRITTER & GUITARI Pocket Piano、ELECTRO-HARMONIX Electronic Crash Drum、サーキット・ベンディングされたCASIO SK-1など、白いスタジオの中でカラフルなそれらの姿はとても目立っている。
 「ガジェットは何でもいいっていうとあれですけど、"弾く"というよりもDJ的なリズムに合わせてつまみをいじっていくもの。面白かったり気が向いたら使います。それはモジュラー・シンセも一緒ですね。白いフレームに入れてもらったVERBOSのシステムは、一応タッチプレート式の鍵盤が付いていますけど、鍵盤から離れた感じ......電圧を直接触ってビリビリしている感じがいいんです。あ、でもこのモジュラー・シンセはスタジオに来て日が浅いので、『CUTE』では使ってませんけどね」
 シンセサイザーが好きではあるが鍵盤弾きではないというテイ。そんな彼であっても鍵盤の呪縛は大きいそうだ。
 「鍵盤っていうインターフェースは本当によくできている......よくできすぎているんです。僕は鍵盤が弾けるわけではないですが、弾けないなりにそのインターフェースに左右されてしまう。だからガジェットを使うとかモジュラー・シンセを使うっていうのは気分転換。その気分転換の感じをさらに盛り上げるため、モジュラー・シンセもわざと高いところに置いて、立たないと作業できないようにしてます(笑)」

 白を基調としたスタジオに、新作のキーとなった黒いシンセや赤いシンセ、そしてガジェット類がアクセントを加える。テイはそれらを回遊しつつ新しい音を生みだす。ひとつ、そしてまたひとつ音が加えられていくたびに、空間は煌めき、いつしか白い光で満たされていくのだ。

國崎 晋(サウンド&レコーディング・マガジン)

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http://www.rittor-music.co.jp/magazine/sr/

※上記は、TOWA TEI 公式ページの為だけに書き下ろして頂きました。是非、本誌もお楽しみください。