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from 1994... "Future listening!" press release

小西康陽 

テイ・トウワ氏に初めて会ったのは2年前の夏、ニューヨークでのこと。
電話で話したことはあったけれども、大好きなディー・ライトのメンバーとして彼はぼくにとってアイドル的存在だったし、ちょうど彼らのセカンド・アルバム
『インフィニティ・ウィズィン』のリリースを心待ちにしていたときだったから、
ピチカート・ファイヴの打ち上げのレストランに、彼自らサンプル・カセットを持って
会いに来てくれたときは、嬉しくて嬉しくて、『ランナウエイ』という曲の
12インチ・シングルにサインまで貰っちゃったほどだ。
そして去年はさらに親しくなった。ぼくたちの『ボサ・ノヴァ2001』を聴いて、
早速感想をFAXで送ってくれたのがまた嬉しかった。いまでも大切にとってある。
ふたたび夏のニューヨークでのライブでは、ターンテーブル担当として
一緒にステージに立ってくれた。
何軒か案内してもらったレコード屋で信じられないほどたくさんの買い物をした。
あんなに楽しい想い出はない。
その去年の夏のステージのリハーサルのとき、しばらく待ち時間が出来たのだったか、
レコードを取りに戻ったのだったか、とにかくある日の午後、彼の住んでいる素敵な
アパートメントに、友人の坂口修氏と訪れたことがあった。お腹すいてたら食べませんか、
と彼の奥様が出してくれたのは、意外にも日本のカップラーメンで、こういうのは
ニューヨークでは手に入るものなのか、と思った。そしてぼくたちは発売されてから
まだ食べたことのなかった“日清ラ王”を選んでお湯を注いでいただいた。
そうしてカップラーメンをすすりつつ、彼の仕事部屋で、こんなのは知っています? 
などと言っては次々と針を落としてくれるレコードに耳を傾けていた。
もちろん知っているレコードは一枚もなかった。映画音楽あり、ボサあり、インドあり、まったく
得体の知れないないのあり。どれもジャケットが洒落ていて音も強烈にカッコ良かった。
何よりもチョイチョイとかけてくれるレコードの音が、そのままテイ・トウワ氏のイメージそのものなのだ。
ヒップでキャンプでキャッチーで、ラーガでボサでムーギーで、ファンキーでスパイシーで
デイジーなイメージ。日清ラ王の味が一秒ごとにカレー味になったり、キムチ味になったり、
ガンジャ味になったりして驚いた。
日本でも多くのスタイリッシュなDJを知っているけれども、選んだレコードを通して、
彼ほど強烈なオリジナリティを感じさせてくれる人はいない。たまにミュージシャンで、
ギターやオルガンに触れた途端に、ああ、この人の音だ、と判るサウンドが飛び出してくる人が
いるけれども、楽器を弾くようにレコードを選んでみせてくれた人は
テイ・トウワ氏しかいない。もうひとり思い出した、ヤンさん。ヤン富田氏もそんなふうだった。
東京に戻ってからしばらく、インド味のレコードとミソ味の日清ラ王にハマッてしまった。
テクノヴァという言葉もフューチャー・リスニング!という言葉も彼から聴いていたから、
このソロアルバムは待ち遠しかった。ようやく今年の夏のニュー・ヨークで、
またしても彼自ら渡してくれたDATには、4曲のラフミックスが入っていた。
想像もつかないほどカッコいい音楽。またしてもラ王が食べたくなった。
まだまだ憶えていることはたくさんある。トップレス・バーのこと、「トウワと真貴」のこと、
京都にDJしに行ったときのこと、プリンストン大学までバスに乗ってレコードを買いに行ったときのこと。
彼が悪口を言ってたアーティストのことも、彼が着ていたダウン・ジャケットの色も全部憶えている。
こんなに親しくなっても、テイ・トウワ氏はいまだにぼくのアイドルだし、20世紀の天才芸術家のひとりだと思うから。
そしてたぶん21世紀も。


小林 径

いつだったかトウワ氏と話をしていた時、ディー・ライトのLPの中で僕の好きな曲を
挙げたら全部トウワ氏の作ったトラックだという事がわかった。
ア・トライブ・コールド・クウェストの1stもかなりトウワ氏が関わっているらしい。
そういう話を総合するとネイティブタングス一派の持つマテリアルやアレンジの柔軟性、
セレクトしてくるネタのジャンルの広さ、それらのオリジネイターがトウワ氏ではないかという気すらして来る。
最近「SELECT」というキイワードを中心に音楽を考えている僕にとってレディメード的な
手法を基にそれをさらにデフォルメしてオリジナルな物を作っていく、という作業を
徹底してやっているテイ・トウワ氏にはすぐ「HIP HOPを通過した生バンド」とか
簡単に一つのジャンルを通過したりするような人とかにはないいさぎよさと、
パースペクティブの広さを感じる今日この頃である


高木 完

1. まっ昼間っから高野寛君の弾くエレキ・シタールのフレーズが耳にこ?-りついちゃって
困ってる高木です。テープをいただいてから聴くのはこれで2回目。そこで感想
(評論ではない):一言で言えばポップ…完成度高いし、流行りそうだし、上品だし。
何よりクラブ・プレイ可の曲多いし…(アナログ希望)。そのビーツ的な事で言わせてもらえば
音はやっぱりNYに住んでるっていう音だと思う。その辺が面白い。東京じゃ出来ない作品だと思った。
東京だと上品にポップに仕上げるとただそれだけなんだ。キレイキレイなだけで。
良い悪い抜きにして。でもこの作品は上品なのに下世話。それが面白い。
これはもう機材の問題じゃ無いと思う。土地の音…なのかな。超簡単に言っちゃうと、ビーツがタフなんだ。本人の趣味もあるんだろうけど。
あと精神的に強いものも感じる。
テイ君とはすっげえ突っ込んで話をした事ってまだ無いんだけど、見かけより全然タフな人だなあと
常々感じてて、別にマッチョって事じゃなしに(当たり前か!)。バランスいいな、と思ったわけ、
人も作品も。その辺リスペクト!だと素直に思います。
それからこれはもう一目というか一聴して誰もがわかる事だと思うけど、
ディー・ライトのニュー・ウェーヴィでポップな部分はこの人の資質によるものだってのも、
この作品でよううううくわかった。そしてなんなのかな、こうゆう本当にインターナショナルなもの
を作れる人には無理に“日本的”なものって期待しないんだけど、
日本語の歌が入ってたりするとやっぱりうれしいってのある。超ドメスティックな作風なのに、
ヘタな英語のっけて“目指すは世界”みたいな事言ってるアーティストと全く逆の方向を向いてるかんじで好きです。
何はともあれ初めてのソロ・アルバム、完成おめでとうございます。

2. なんてこった! どうやらテイ・トウワのファースト・ソロ・アルバムは表面上ポップに
作られている分だけ、毒の利きが遅かったようだ。もうとっくに締め切りは過ぎている。
間に合わないかもしれないがキーを打つ手は止まらない。
当初気付かなかった毒が今になって利き始め、そいつが僕を再びパワーブックに向かわせる。
カマゲン!ってやつだ。申し訳無い! 
とにかく誰もが聴けばわかる事だと思うが、ここには最近のキッズが欲しているサウンドが、
たっぷり詰まっている。売れる事は先ず間違い無いだろう。
これが売れなかったら、それはアーティストの責任ではない。何はともあれ、ヘソ曲がりな僕は
最初聴いた時、もっと珍妙で聴いた事も無い世界へ連れてってくれる事を期待していた。
それにはこの作品は旨く作られたポップ・アルバム…という印象の方が強かった。
が、が、が、が、が、だがしかし! 今年の異常な夏の中で聴いたサンプル・テープは
僕の家のテープ・デッキにぶちこまれたままノン・ストップ、パワー・プレイを続け、
いつしかこの部屋の天然BGMのようなものになり、そして…。当初僕はこのアル
バムを“上品だけど下世話”という表現を用いて感想文のようなコメント原稿を寄せた。
今でもその感想は揺るぎないものとして僕の中にインプットされているのだが、
ここで改めて特筆したいのは、忍?-込む毒気についてだ。その毒は笑いと共にやってくる。
表面上は聴きやすい。しかしそこにはとんでもないスパイスが巧妙にまぶされている。
サウンドのタフさについては第1稿の原稿でも書いたのだがその辺の音及?-本人のタフ
さに加えて、今回は気付きにくいねじれ感がこのアルバムの魅力になっている…と書き記す事にする。
例えて言うならば、すごい2の線で女をくどいてくどいてくどきおとすんだけど、
実は…みたいな、そんなかんじ。
しかしこうきたらくどかれた女としてはこの次はさらに深い所に連れてってもらいたくなるんじゃないだろうか…。期待してまっせ。